先日某メーカー様で出張講習をさせていただきました。お題は「手戻りのない自動化の進め方」です。デンソー在職中何回か「手戻り」を発生させてしまいましたが、それでもそんなにひどいことにならずに済んだのは、今振り返ればいろいろな工夫や心がけがあったからです。講習ではそれらのノウハウをシェアしましたが、その中のひとつとして「コミュニケーション・スキル」の話をしました。
「自動化」は企画段階から完成まで少なくとも数ヶ月、場合によっては1年以上かかることも珍しくありません。その間、たくさんの人とコミュニケーションしてプランを磨き上げる必要があります。このコミュニケーションを怠って独りよがりのプランで突き進むと、早晩どこかのフェーズで手戻りが待っています。
ではだれとコミュニケーションするか、ですが、あなたが生産技術部門の方なら、生産部門や保全部門、設備メーカーの営業や設計といった面々が対象になります。さらにいえば決裁を仰ぐ上長も対象です。この方たちとうまくコミュニケーションして有益な情報を引き出し、いろいろな視点からの意見をもらってプランに反映させれば手戻りはなくなるか、あっても軽微なものになります。
とはいえ、やみくもにコミュニケーションを図っても、相手にそっぽ向かれたり、怒らせてしまっては意味がありません。そういう意味でコミュニケーション・スキルの向上は重要です。
コミュニケーション・スキルの根幹は以下の4つの言語能力です。
読む
書く
聞く
話す
これ以外に、ノンヴァーバル(非言語)コミュニケーションも重要です。ノンヴァーバルとは、聞く/話すときの表情や態度、声のトーン、身振り手振りといったものです。これらが相手にとって不快なものであれば、やはりコミュニケーションに齟齬をきたします。
これらのレベルアップを図るためには語彙(ボキャブラリー)や表現力、読解力を磨くための読書とか、プレゼン力、傾聴力を磨く訓練を行うことを勧めます。
ただしこれらを磨いても足らないものがあります。それはマインド(気持ち)です。抽象的なもののように思われるかもしれませんが、よいマインドがあれば出てくることばもそれに沿ったものになりますし、相手の話も素直に入ってきます。さらにノンヴァーバルについていえば、これはもうマインドと表裏一体です。そもそもノンヴァーバルはほとんどの場合無意識から出るものなので(これが意識的にできる人は役者になれます)、よいマインドがあれば、よい態度が表に出てきます。
そしてこのよいマインドを保つための唯一の方法が、相手に感謝とリスペクト(尊敬)の念を抱くことです。これがあれば、例え出てくることばが拙くても、ちゃんと誠意が伝わります。不思議なもので、どれだけきれいなことばを使っても、気持ちの中にどす黒いものがあれば、これもちゃんと相手に伝わります。
こう話すと「いや、私はそもそもそういうキャラじゃない」とおっしゃる方がいます。大変だと思いますがそういう方は割り切って、仕事中だけそういう気持ちを持ってみてください。すると不思議なぐらいうまくコミュニケーションができます。その体験を重ねると、最後はそれがその方のキャラになります。ぜひお試しを。