ビジネスが拡大し、組織が大きくなると、必然的に社内の分業化が進みます。その方が全体の効率が上がるはずですが、時として、細分化した組織同士が責任を押し付け合ったり、いがみ合ったりして、かえって非効率な状態になることがあります。
もう少し詳しく観察してみると、それぞれの部署が自分たちの業務範囲を勝手に決め、その範囲だけをしっかりやればよいと雰囲気で仕事をしています。おそらくルーチン業務はこれで問題ないでしょう。しかしイレギュラーな事態が発生したときもこの業務範囲を頑なに守ると、どうしてもグレーゾーン的な仕事が残ります。デンソー在籍時代、ある人(偉い人)はその部分を『仕事の糊代』と呼んでました。そして「仕事の糊代は積極的に手を出してください」と呼びかけていました。本当にそのとおりだと思います。責任を押し付けあっている部署たちのさらに上の職位から見ると、実にくだらない状況です。「どっちでもいいから早くやれ!」です。
それにしてもどうしてこうなってしまうのか?私の見立てでは、マネージャーたちの過剰な管理に問題があると思っています。自分が指示したこと以外の仕事を部下がするのを極端に嫌うとか、「うまくいかなかったら責任が取れるのか?」といった言動も、糊代から遠ざかる圧力になります。
心ある部下はそういう状況に心を痛めますが、一方で、やるべきかどうか悩む必要がないのでこのスタイルを支持する部下も現れます。こうなると組織は自律的に動くことができなくなり、組織の活性化が難しくなります。
逆に言えば、グレーゾーン的な仕事もお見合いすることなく、「やれる人がやればよい」というスタンスで対応できる組織は活性化しています。「どうも部下の目が死んでる」と思うマネージャーさんは、自分の言動をもう一度振り返ってみてください。