ビジネス系の本を読んでいるとしばしば目にするのが、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの『種の起源』の名言です。
最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは変化する者である。
ビジネスの世界では確かにそのとおり、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できた者だけが生き残ります。ただし実はこの名言、ダーウィンの死後80年ほど経ってからの、レオン・メギンソンというアメリカの経営学者による独自解釈です。
実際に『種の起源』に出てくる表現は微妙に違います。
生き残る種とは、最も知的なものではなく、最も強いものでもない。変化する環境に最もよく適応したものである。
つまりその環境に適した種だけが生き残ると意味です。個体が変化して環境変化に適応するという意味ではありません。考えてみればわかるのですが、一匹の哺乳類が生きている間に二足歩行ができるようになったり、脳の容積が増えたりすることはありません。何かの拍子の突然変異でそのような個体が誕生し、たまたまそのときの環境に適していたら生き残ります。そういった変化は最低でも100万年かかります。また突然変異は方向性がなく、まったくランダムで、環境に適応できなかった突然変異も無数にあります。
レオン・メギンソンの独自解釈は、それはそれで含蓄があるのですが、別の解釈も考えられます。
この名言の『種』を「個人」で考えればレオン・メギンソンの独自解釈になりますが、これを「組織」で考えれば、「多様性が大事である」という解釈ができます。
モノカルチャーの組織は、ある一定のビジネス環境では無類の強さを発揮しますが、環境が変化すると全滅します。そこで多様性を認め、ある時期においては一見非効率に見えるメンバーもあえてキープしておくと、環境激変時の救世主になるかもしれません。もちろんそうなる保証はありませんが、認めないよりはずっと生き残る可能性が上がるはずです。