ハイサイクル化の進め方

マシンタイムを短縮することを、デンソーでは「ハイサイクル化」と呼んでいました。この進め方についてもセオリーがあります。優先順位は次のとおりです。

  1. 正味加工時間の短縮
    まずはじめに考えるべきは正味の加工時間(以下、加工時間)の短縮です。例えば目標サイクルタイムが10秒で加工時間が12秒なら、なんとか頑張って、8秒未満を狙いたいものです。そうすると、1個流しが可能になるからです。「いや、そんなに無理をしなくても2個取りでいいのでは?」と思われるかもしれませんが、後述するとおり、1つの設備(あるいはライン)で1個流しと2個流しが混在すると、制御が途端に複雑になり、チョコ停後の復帰もややこしくなります。基本は1個流しです。
    もちろん加工時間の短縮は簡単ではありません。多くの場合、品質とのトレードオフになります。それでもやる価値があります。
  2. 搬送時間の短縮
    次に考えるのが搬送時間、いわゆるマテハン時間の短縮です。このブログを読まれている方が生産技術の方なら、これはある程度設備設計に任せてもよい領域です。むしろ生産技術は上記1の加工時間短縮に注力すべきです。
    ちなみに搬送時間短縮の着眼点は、
     ・ 搬送距離の短縮
     ・ 搬送前と搬送後の高さの統一
     ・ サーボ機器の採用
    といったところです。サーボ機器の採用が効果的なのは、いうまでもなく動作速度が速いからです。通常エア機器の動作速度がmax500mm/s(メーカー推奨速度は200mm/s)であるのに対して、サーボ機器は1,000mm/s以上が期待できます。ただし搬送距離が短いと最高速度に到達する前に搬送が完了してしまいます。加減速Gの設定にもよりますが、搬送距離が50mm以下の場合、エア機器とサーボ機器の動作時間はあまり変わりません。
    さらに付け加えると、サーボ機器の加減速は0.5Gぐらいまでが好ましいです。これより大きいGになると、機器の耐久性に影響が出てきます。
  3. 多数個取り
    1と2の対応で解決しない場合にはじめて多数個取りを考えます。ただし先述したとおり、多数個取りにはデメリットがあります。
    例えばひとつの設備(あるいはライン)で、はじめは1個取り、途中で2個取り、最後が再び1個取りとすると、2個取りのゾーンの直前と直後に、個数を整えるためのバッファが必要になります。したがって途中だけ2個取りにするなら、設備の中はすべて2個取りで統一した方がすっきりします。
    しかしそれでもなお困ることがあります。NG品発生とかトラブルで、2個のうち1個が欠品となった場合どうするかを考えなければなりません。欠品のまま空き家で流すのか、あるいは次ワークを前詰めするか、これはロット管理をどうするかとも密接に関連します。これについては制御設計としっかりコミュニケーションを取って、メカ設計に反映する必要があります。
    ちなみに多数個取りを採用する場合、2の次は4、5、8、10といった個数がよく採用されます。5以外の奇数はあまり見かけません。

繰り返しになりますが、やはり一番有効なのは加工時間の短縮です。これがもっともコストダウンに繋がります。

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